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ガール ミーツ ボーイ 
『ガール ミーツ ボーイ』 野中 柊さん著

「ボーイ ミーツ ガール」というのは、以前歌った歌の
サブタイトルにもしたんですが、少年と少女が出逢い、
そしてそこから始まる物語。語感からして爽やかな恋の
予感で、期待に胸が膨らむ感じですよね。

表題作の「ガール ミーツ ボーイ」のガールは、
31才の母で、ボーイは6才の息子というカップリング。
恋よりもさらに深い愛のお話・・・といっても崇高なそれ
ではなく、時に友達みたいな二人の関係は、例えば
こんなかんじ・・・
(お風呂上がりには、大小お揃いのバスローブを身に
まとい・・中略・・私は缶ビールを、息子はペプシを
ちびちびと飲みはじめる。
「いやぁ、憩うねぇ」「うん。かなり」
「太郎くん、一週間、おつかれだったね」
「ママこそ。ほんと、おつかれ」なんて具合に互いを
ねぎらい合いながら。(本文より))

・・と、ほほえましくもあり、イマドキの親子関係っぽく
もあり(^^◎ また、こんなシーンも

(どんな思い出よりも、息子と過ごした時間に優る甘やか
な思い出がありうるだろうか。私は息子の手を握って、
女の子の気分を味わっている。母親であると同時に、
私は女の子だ。・・中略・・「太郎、ポップコーン買って
ママ、ポップコーンが食べたいよ。」ボーイフレンドに
甘えるみたいに、甘ったれた声を出すと、太郎は売店を
探してきょろきょろとあたりを見回した。(本文より))

息子を持つ母親はきっと、自分の父親や夫に抱く愛情とも
ひと味違う「ママの小さな恋人」みたいな、かわいらしい
お菓子みたいに淡くて甘い愛情を抱くのかもしれませんね

さて、この主人公の母・美世は、訳あって、息子・太郎と
二人暮らしをしています。夫は太郎が4才の時に失踪して
以来、どこにいるのか?何をしているのか?生きているの
かも分からない状態が続く中、物語の後半で、その原因と
真相が描かれます。

美世が思いがけない形で、どこまでも身勝手だった夫の
最後の思いを知った時、混乱する気持ちの中に、怒りと
悲しみと、そして大好きだった事実がとめどなくあふれて
・・・美世はそれらを終わらせて、過去に葬るための
手順を踏みます。

そんな折、同じマンションに住む、父と娘ふたり暮らし
の親子と出会います。お互いに、大事な家族の一員の
不在というぽっかり空いた穴を抱えて生きている、
その共通意識や、痛みを理解し合えることに
親しみが芽生えて、二家族は次第に打ち解けてゆきます。

人は生きていく中で、望む望まざるに関わらず、無数の
出逢いと別れを繰り返します。壊れる関係もあれば、
新しく生まれる関係もあって・・・それがいつ始まって
いつまで続くのか。終わりが次の始まりにどうやって
繋がるのか。その時になってみないと知る由はないの
だけど、それでも、出会った人たちとの今を大事にして
いつか大事な思い出にしていきたいなと思わせてくれる
小説でした。

ps. 実は、もうひとつの収録作。
「ボーイ ミーツ ガール」が好きです。それこそ
幼い少年と少女、小学校2年生の男の子・鈴木くんと
小学校5年生の女の子・マユミちゃんの物語ですが、
この物語のキュートな魅力は、このシーンに尽きます!
(彼女は、なんだか、とてもオトナっぽい雰囲気なのだ。
・・中略・・そばに寄ると、なにやらフルーツ味のガム
みたいな匂いもする。「鈴木くんだっけ?あんた、
うろうろしてないで、ゴミ捨ててきてよ」
そう邪険に命令されたときは嬉しくて、「はい!」
鈴木くんは小坊主のような、いいお返事をしてしまった。
(本文より))

春は出逢いと別れの季節ですからね。
大人の皆さんも、子供の皆さんも、
Boy meets Girl! Girl meets Boy!(*^0^*)/
【2008/03/19 18:52】 | 本のおはなし
徹底してクール!でも、奇妙に和む物語(^^
『死神の精度』 伊坂幸太郎さん著

前回のおすすめ小説は『ヘブン』でしたが、今回は
『死神』(笑) といっても不吉な物語ではなく、
むしろ不思議と心あたたまる物語なのです(^^*

主人公の『死神』がある人物について7日間の調査した後
報告結果を『可』とすると、その人物は翌日の8日目に
亡くなります。ほとんどの場合は『可』ですが、
ごくごく稀に『見送り』として、死を免れることもあります。

調査時の死神の様子ですが、
その1.その時々の担当の人物に近い、もしくは親しみ
やすい姿で現れる。(担当が若い女性の時は、男性モデル
のような容姿に、担当が裏の世界の人物の時は、
同業者っぽい容姿に。)

その2.名前が町や市の名前である。
(主人公の名前は『千葉』)

その3.『ミュージック』をこよなく愛すため、仕事の
合間はCDショップの視聴コーナーに入り浸り。
(視聴の合間に仕事をするというウワサも(笑))

その4.素手で人間に触れてはいけない。
(触れた人間は気絶し、寿命が一年縮むため。)

その5.これは千葉限定ルールのようですが、仕事をする
時はいつも雨。(その話を聞いた担当の女性が「雨男
なんですね。」と言ったら、「雪男というのもそれか」
と聞き返すあたりが本書のユーモアどころなのです。

他にも、「わたし醜いんです」という女性に対し、
『いや、見やすい。』『見にくくはない』と答えたり、

千葉『かたおもい、というやつか』
男性「千葉さん、よく真面目な顔でそんなこと言えますね」
千葉『恥ずかしい言葉なのかこれは』
男性「いい大人が口にするのには度胸が」
千葉『悪い大人ならいいというわけか』

などなど。
千葉は『死』を扱うだけに、徹底してクールですが、
人間の言葉を熟知していないため、言葉のレトリックが
理解できず、こうした受け答えの噛み合わなさやズレが
奇妙に和むというか(笑)笑いのツボなのです(^^

6編の物語が収録された本書。表題作の第1話は、この春
映画としても公開されます。このお話もよかったですが、
意外にも、普段は怖くて全く読めない裏社会を舞台にした
第2話『死神と藤田』がいちばんじ〜んときちゃいました。
う〜ん。こんな死神なら会ってみたい!?σ(^^;

【2008/03/12 20:10】 | 本のおはなし
ヘヴンリー・ヘヴン
『ヘヴンリー・ヘヴン』 沢木まひろさん著

はじめて読む作家さんの本は、背表紙のあらすじや
パラパラっとページを繰る時に、文面で興味を惹かれて
手にとるため期待が大きいです。

今回、「大人の恋」それも「大人の・・・だけど不器用で
あたたかい・・・恋」の短編を収めたこちらは、期待以上
でした。

大人の恋を描いた作品って、どうしてもシリアスだったり
格好良すぎて・・・わたしも十分大人なんだけど(笑)
もうちょっとやわらかい、それこそ不器用であたたかい
大人の恋愛小説が読みたいなあと思っていたんですよね。

この「ヘヴンリー・ヘヴン」は、そんなわたしの願望に
ぴったり☆
特に、「女神の伝言」「ヘヴンリー・ヘヴン」「彼女の
或る日」が好きです。

「女神の伝言」では、最初の2ページで描かれる
「世界最強のひと」である主人公の母が、とっても魅力
的です。そんな母を上回る彼女と果たして出会うことが
できるのか・・・という主人公の恋。

「彼女の或る日」では、或る日弟が「会ってほしいひと
がいる」と言って恋人を連れてきます。が、一目見て
「姉の自分に恋人候補を連れてきてくれたのか」と
つい勘違いしてしまったその人は、なんと男性で・・・

お互いがお互いをとても純粋に愛し合っているのが
ひしひしと伝わってくるような二人が、春風のように
やわらかく現実をあたたかく変えてゆく物語。

そして表題作でもある「ヘヴンリー・ヘヴン」は、この間
『さくら・ボイスヒーリング』で、「今読んでいる本の
フレーズを借りれば」とお話したのがこちら。

酔っぱらって深夜に時々やってくる元同僚の男性二人と
二年前に一念発起して会社を辞めて、料理人(プリモ・
ピアットというパスタの担当)になった女の子の
三角関係・・・とも呼べないようなそれぞれの片想いを
描いた物語。

大人になってだんだん落ち着いたり、色褪せたりしていく
毎日の中で、思春期のように気持ちが押さえられない
新鮮でピュアな想いを感じると・・・人は忘れかけた想い
が鮮やかに蘇ることをいつもどこかで期待しているのかも
しれませんね。

大人になると、いろいろな事情や現実の壁が立ちはだ
かって、恋の炎を灯す前にそっと心の中で消してゆく
こともきっとあると思いますが、大人になっても、
恋愛の前では、不器用で悩んだり落ち込んだり・・・
でも「とても幸せな夢を見てるみたい」な気分を味わう
たびに、天国にいるような感覚になる。
この三人の恋のように、大人の恋だってそれでいい。
それがいいと思います(*^-^*)

【2008/02/28 18:47】 | 本のおはなし
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